毎年恒例、Developer's summit 2012に行ってきました。毎年、目黒の雅叙園に行くのがこのタイミング。
去年も同じ時期にいってひな祭りの展示を見かけましたが、今年も同じようにありました。
雅叙園は元々結婚式場です。デブサミの度にしか行かないので勘違いしそうでしたが、たまたま花嫁さんを見かけました。
というわけで、デブサミ2012です。
まずは一日目から。
16-B-1 極上のSI戦略
何かとdisられるSIerですが、「そのSIerの仕事って本来はもっと楽しいよね、でもなんでdisられるんだろう。disられずに本来の楽しい仕事ができるには?」ということをテーマにしたセッションでした。
SIの仕事の魅力は?
講演者の漆原さんは、SIの仕事=エンタープライズに対するシステム開発の魅力として
顧客企業の命運を握るシステム開発ができること。そのために、多くのものが期待されている。
と語られています。たしかに、Twitterが止まっても「ま、しょうがねぇか」で済みますが、エンタープライズは止まると企業が潰れてしまいます。我々IT技術屋にとっては、学んだすべてのことを費やして、止まらない、確実なシステム開発が求められる究極な場所と言ってもいいかもしれません。
嫌な点
仕事内容だけとると、魅力的な職場ですが、なぜdisられるのでしょう。漆原さんは、
顧客評価が低い、顧客が見えない。多重請負。質が低い。過重労働。無責任・多くの責任。etc
と色々挙げました。これらは、もうSIerに務めている人は納得する部分ところが多いでしょう。
変える!
このままだとダメなのはみんな、み〜んな分かっていますが、変えるには相当の覚悟が必要です。リスクヘッジができなくなるからです。ですが、変えないと開発者も発注者も不幸になるのが分かっている。
そこで、漆原さんは多くの議論を重ね、SIビジネスを変えることにしました。どのように変えたかというと、
少数、プロパー純血主義で。それでやれる範囲の仕事をやる。そして、品質・技術に拘る。1案件に100%アサイン。
正直、聞いたときには「む、無理じゃね?」と思いました。実際、導入した当初は売上・利益ともに凹んだそうです。
が、その後は利益が増えたそうです。売上は仕事を選んでいることもあって減ったのは事実ですが、確実に利益を上げることができ、経営はやりやすくなったそうです。
感想
講演の中で漆原さんが
僕は経営者としては失格でしょう。
とおっしゃってました。仕事を選び、少数精鋭で仕事にとりかかることをしているので、会社としてはなかなか大きくなることはないでしょう。会社を大きくすることに経営上の意味を見出す人にとってはたしかに失格かもしれません。
が、利益を得られる確度を上げるための仕組みを作った意味では、今回の取り組みは経営的に見ても成功かと思います。
経営者としての視点で語られることが多いので、明日から使える技術者向けというわけではありませんでしたが、その中でも
他責(他人に責任をおしつけること)にはしない。人のせい、モノのせいにしなければ、みんなが幸せになれる。
という言葉は共感を覚え、すぐさま実現できることと覚えました。
16-B-2 Yahoo!アジャイルクロニクル〜コーチとエンジニアの体験記〜
Yahoo! Japanでアジャイル開発を導入した際の体験記を、アジャイルコーチとエンジニアそれぞれの視点で述べられた講演。
コーチ編
コーチ編は高橋さんより。アジャイル手法で開発を推進していた所属してた会社が、Yahoo!さんに買収されたことでYahoo!にアジャイルを導入することになったのがきっかけ。
進めるにはいろいろハードルがあったそうですが、それを乗り越えるために、
アジャイル開発に限らず、何かを推進するには攻めと守りの二つの側面がある。だから、二人三脚がいいと思い、活動を開始した。
とか
共感大事。漠然と感じている不安や恐怖を理解する。
と言ったことは、アジャイル開発以外にも使えそうな進め方と思いました。
アジャイル開発については、すべてがバンザイってわけではなくて、いい面・悪い面それぞれについて
楽しく仕事ができたことがポジティブな反応、ネガティブはスプリント単位で成果が求められるのは厳しい
ということを述べられたのは、実際に導入されたから得られた言葉と感じました。
エンジニア編
エンジニア編は長岡さんより。開発メンバー5人からなるリーダー的な立場の方であり、アジャイル導入前は
コミュニケーション不足が発生。お互い何をやっているか分からない。お願いしたものが期日に出来るかわからない状況であった。
という不安・不満を抱えていたそうです。
アジャイルの導入により、
良い効果が多数。見える化で全体がわかるようになったとか。不評な効果もあり、1スプリントを1週間にしたことで、終わらせることができなかったり、リリースミスが起きたりしていた。
という良い効果、悪い効果が得られたとのこと。不評な点は改善しようとしてあれこれ考えられたそうなのですが、
マスターからは『スプリントを2週間にすれば』と言われ、初めてスプリントの短さに気がついた。
という単純なことにも気がつかなかったことを経験談として述べられてました。エンジニアはよく目の前の問題に対して近視眼的になってしまうことが多い(私だけ?)なのですが、
チームが突っ走っているなかで、一歩引いた目で見てくれるスクラムマスターはありがたい。
と述べられているように、スクラムマスターの存在意義を認識されていることは素敵に感じました。
16-B-3 教科書と現場のあいだ〜学びを活かすために〜
DDDの翻訳者として著名な和智さんの講演。
エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計 (IT Architects’Archive ソフトウェア開発の実践)
- 作者: エリック・エヴァンス,今関剛,和智右桂,牧野祐子
- 出版社/メーカー: 翔泳社
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アジャイル開発の教科書に書かれているような、
「プランニングポーカーをやってみたい」といった方法論から入ると大局観を失ってしまい、アジャイル開発は失敗してしまう
ということを述べられ、自分も方法論に囚われていることにハッと気が付きました。方法そのものではなく、その背景にある意味を理解する必要がある・・・とよく言われていることですが、方法論にとらわれがちな自分に改めて気がつかせてくれました。
和智さんの講演は全体的に抽象度が高くなかなか理解するのが難しかったのですが、それは実践に対しても同じで、
実践に対して原則の部分は抽象度が高く、学ぶには難易度が高め。学ぶ範囲も広い。戦略的に勉強する必要があるため、『求められるものは何か』と日々俯瞰できるようにする。
という言葉でまとめられてました。
う〜ん、自分に求められているもんってなんだろう。日々の業務に忙殺されて考えていることもないなぁ。ひたすらRubyプログラム書いていて、それはそれで楽しいんだけど、今後求められるものはなにかと考えんとあかんなぁと思うに至った講演でした。
16-B-4 アジャイル開発の10年と今後を語ろう
やべ。本のことぐらいしか覚えてません・・・orz。
面白いと思ったのは、リファクタリング本とXP本が相互参照されている点。
リファクタリング―プログラムの体質改善テクニック (Object Technology Series)
- 作者: マーチンファウラー,Martin Fowler,児玉公信,平澤章,友野晶夫,梅沢真史
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XPエクストリーム・プログラミング入門―ソフトウェア開発の究極の手法
- 作者: ケントベック,Kent Beck,長瀬嘉秀,飯塚麻理香,永田渉
- 出版社/メーカー: ピアソンエデュケーション
- 発売日: 2000/12
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後は、リーンソフトウェア開発に対しての話が多かった感じ。リーンソフトウェア開発は単語しか知らなかったので、読まないとなぁと思いながら。
- 作者: メアリー・ポッペンディーク,トム・ポッペンディーク,高嶋優子,天野勝,平鍋健児
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2008/02/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ただ、本ばっかり読んでいると結局方法論に終始してしまう。実際にそれを現場で適用することが方法論を活かすためには実践しかなく、そのことを平鍋さんも
分厚い方法論を持っている会社は滅びてしまうのではないか。やっている人が考える仕組みを作るのは当たり前で、やっている人と方法論を作る人が別である状態は、方法論が形骸化してしまうことを意味する。
ということでまとめられてました。
16-B-6 いまどきのi18nのはなし
GREEのCTO、藤本さんによる講演。ソーシャルゲーム・プラットフォーマーとして有名なGREEさんですが、事業は日本だけでなく海外に目を向けていて、そこで得られた知見を続々と発表されてました。
ぼくらは『世界中にサービスを出す』ということをもっと意識したほうがいいかもしれない。
という言葉が響きました。
ただ、実際ソフトウェアを国際化対応するのはいろんなハードルがあって、
- 語順
- 数字。桁区切りのスタイルが各国で違ったり。
- 日付のフォーマット
- 表示幅
- Bi-Di
- 基準とするタイムゾーン
- etc
もう、いろいろと課題はあってライブラリで解決するものとしないもの、決めの問題のものなど有ったりして考え始めると奥が深い。
ですが、まずは基本的なところで
を守れば国際化の一歩は十分じゃないかなということで話をまとめられてました。
16-B-7 デブサミオフィシャルコミュニティから選出のLT大会2012
デブサミ恒例のLT大会。このLTを訊きに来た人はもれなく人妻好きと美人妻から認定された講演でもあります。
今回のLTでは
- OSS COBOL WG
- CouchDB JP
- DevLOVE
- 日本Grails/Groovyユーザーグループ
- オブラブ
- JAZUG
- TIDAコンソーシアム
- 日本App Inventorユーザー会
- COMU+
- Hack for Japan
- remembAR
- 東北デベロッパーズコミュニティ
- アジャイルプロセス協議会
- TDD研究会
- コワーキングJP
さんのLTでした。詳細は、各リンク先を参照してください。
1日目を終えて
デブサミ1日目を終えて。実況ツイートしていたので、あんまり中身覚えられないかなぁと思いましたが、、自分の中で要約を考えながらツイートしたこともあって結構覚えているし、印象に残っている。これからも実況ツイートは続けようかなぁ。
アジャイル関係の講演を中心に聞いたのですが、アジャイル宣言から10年経って、適用事例が出てきて、そもそもウォーターフォールと敵対するものではない、やり方だけではなくて本質を考えるとウォーターフォールもアジャイルも一緒では?という印象を受けました。
後はそれを実践して、自分でのアジャイルを作りあげていくしか無いかなと。ソフトウェア開発って難しいなぁ。楽しいんだけど。